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「吸血鬼・昂夜/監視員・碧」シリーズ 6話
本文は続きから
本文は続きから
二階にあるベランダは、彼のお気に入りの場所らしい。
彼は昼・夜問わず、毎日外を眺めている。
そこから見える景色は、沢山並んだビル、団地、公園、そしてそこに咲く桜。
「桜の花は、今日も満開だな」
「ホント、綺麗だよねぇ……」
うっとりと見惚れている彼の姿。
それを、私は横目で見ていた。
「そう云えば、」
彼は何かを思い出したように云う。
「『桜の樹の下には屍体が埋まっている』って云うけど、何だか桜に親近感湧くよね」
「……そうか?」
「だって、血を吸って薄紅色になるって。なんだか、僕のような吸血鬼みたいだなって」
「さいですか……」
まぁ、云われてみればそう思うけど。
でも、そんな所で親近感湧いて欲しくない。
「誰が云い出したんだろうな、そんな事」
つい、思っていたことを口に出してしまった。
彼は私の顔を見て微笑むと、説明し始めた。
「少し前に、梶井基次郎と云う作家が居たんだよ」
「あぁ、『檸檬』の著者だな」
「そう。その人が書いた短編小説の中に、『櫻の樹の下には』と云う作品があるんだよ。その作品の冒頭文が例のアレ」
「ほう……」
知らなかった。
しかし、何故そんな冒頭なのか不思議に思った。
「話の荒筋は確か、満開の桜のような美しい景色に耐え切れず、それらに、負のイメージ―つまり、死のイメージ―を重ねることによって、心の均衡を保つって、話だったかな」
「……そうなのか」
だから、冒頭に『屍体が埋まっている』となるのか。
「だけど、死のイメージを重ねるなんて、桜も可哀想だな」
「そう?逆に、洗練された美しい文章だと思うけど」
「……私は、そう思っただけだ」
公園の桜がひらひらと散って逝くのが、遠くからでもはっきりと見えた。
彼は昼・夜問わず、毎日外を眺めている。
そこから見える景色は、沢山並んだビル、団地、公園、そしてそこに咲く桜。
「桜の花は、今日も満開だな」
「ホント、綺麗だよねぇ……」
うっとりと見惚れている彼の姿。
それを、私は横目で見ていた。
「そう云えば、」
彼は何かを思い出したように云う。
「『桜の樹の下には屍体が埋まっている』って云うけど、何だか桜に親近感湧くよね」
「……そうか?」
「だって、血を吸って薄紅色になるって。なんだか、僕のような吸血鬼みたいだなって」
「さいですか……」
まぁ、云われてみればそう思うけど。
でも、そんな所で親近感湧いて欲しくない。
「誰が云い出したんだろうな、そんな事」
つい、思っていたことを口に出してしまった。
彼は私の顔を見て微笑むと、説明し始めた。
「少し前に、梶井基次郎と云う作家が居たんだよ」
「あぁ、『檸檬』の著者だな」
「そう。その人が書いた短編小説の中に、『櫻の樹の下には』と云う作品があるんだよ。その作品の冒頭文が例のアレ」
「ほう……」
知らなかった。
しかし、何故そんな冒頭なのか不思議に思った。
「話の荒筋は確か、満開の桜のような美しい景色に耐え切れず、それらに、負のイメージ―つまり、死のイメージ―を重ねることによって、心の均衡を保つって、話だったかな」
「……そうなのか」
だから、冒頭に『屍体が埋まっている』となるのか。
「だけど、死のイメージを重ねるなんて、桜も可哀想だな」
「そう?逆に、洗練された美しい文章だと思うけど」
「……私は、そう思っただけだ」
公園の桜がひらひらと散って逝くのが、遠くからでもはっきりと見えた。
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